天神様ができるまで

天神様といえば、掛軸に描かれた菅原道真公が思い浮かぶことが多いかと存じます。

生まれた時に贈っていただいた「天神様」は成長してもずっと飾り続けることとなります。

そんな掛軸の天神様がどのようにして、出来上がるかをご紹介いたします。

天神様掛軸展示例

掛軸の天神様の絵はほとんどが和紙ではなく、絹に描かれているということをご存知でしょうか?

「天神様の掛軸」製作は薄い絹地を木枠に貼るところから始まります。

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描きやすく、たるみやしわを残さぬよう熟練の作業です。

絹地はそのままでは色がにじみいやすい為、礬砂(どうさ)と呼ばれるにじみ留めを塗ります。

そして、背景となる色を刷毛で均一に入れていきます。

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背景が十分に乾き落ち着いてからようやく、絵を描いていきます。

描く絹地はこの時点では、宙に浮いている状態ですので筆圧に気を配り特殊な技能が必要とされます。

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絹地に描く場合、先の色が乾くまで次の色を入れることができませんので、色数や加筆していく手数が少ないほど早く仕上げることができることになります。

様々な天神様をよく見てみると、その違いが少しづつわかってまいります。

絵を描く技術とは別に、奥行きや微妙な表情を描くには「色や手数」が必要となり必然的に製作時間もかかるのだということ・・・

天神様の価格が幅広く違う、ひとつの要素かと存じます。

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こうして、描かれた天神様は次は表具の職人に託されることとなります。

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タカツネでは表具を、自ら選んで指定しています。

絵をどのような表具と合わせるか、反物から選ぶことは楽しい反面、ずっしりと責任を感じます。

毎年、初夏に表具屋さんと打ち合せをして生地を手配していただき表具師さんに託します。

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絹に描かれた「本紙」はまず水洗いと乾燥を繰り返します。

この工程で本紙の縮みを出し切ってしまわないと後々動いてしまう為、省くことはできません。

その後、裏打ちといわれる和紙を計3回貼り付けしていくこととなります。

まずは、絹本に直接裏打ちを打つ①「肌裏打ち」を行います。

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昔ながらの「和のり」を温度や湿度に合わせて調合し、より弱いのりでしっかりと仕上げることが肝要です。

これは、長年の後でも表具をやり直す場合、絵を痛めない工夫がされているのです。

ちなみに、近年のすごい廉価な掛軸は和のりではないものを使用しているものもあるようです。

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裏打ちをした後は十分な乾燥をとることが必要です。

昭和の風景として表具屋さんが戸板に貼りつけ天日で何日も乾かす様子が見られました。

この工程も一気にアイロンをかける様に乾燥する方法がとられたものも流通しているようですが、絵を痛めてしまいますし、出来上がりは良くても、数年後の表具の状態は・・・どうなっていることでしょうか。

けっして省略や短縮のできぬ工程と考えております。

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天神様の表具は内側から、たくさん生地をいくえにも合わせて作られています。

学問の神様である天神様に敬意を表し、仏軸に近い表具となっているのか、贈り物としてより上質なものをよしとした結果かはわかりませんが、使用される生地も、その様式もより上等のものとなっています。

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表具生地を全て合わせた後、寸法に合わせて外側を折込み、一体化させる②「中裏打ち」を行います。

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裏打ちを行うごとに、しっかりと乾燥をさせなくてはいけないためどうしても日数と手間がかかります。

この乾燥工程が表具の出来を左右するため、掛軸の表具には2ヶ月近く必要とするのです。

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ここまでご覧いただいたように、「薄い絹」「和紙」「厚みのある表具生地」と違う素材を一体とすれば温度や湿度により全く違う伸縮をいたします。

最後の③「総裏打ち」はこれを調整し、長年の変化に耐えるよう伝統と経験からなる和紙の大きさ、厚さを駆使した微調整を行うものです。

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そして出来上がった掛軸に、軸先や風帯などを手作業で取り付けていきます。

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最後はもういちど「かかり」と呼ばれる全体のバランスをチェックして桐箱に収めます。

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こうして出来上がった天神様が10月下旬に私共のところへ届き、展示場へとお目見えするのでございます。

天神様